
関西学院大学 生命環境学部 生命医科学科
腫瘍細胞生物学研究室 Sawada Lab
1. 膠芽腫の浸潤を規定する形態・分子機構の解明
膠芽腫(グリオブラストーマ)は、生後の脳に発生する脳腫瘍の中で最も悪性度が高く、活発な細胞増殖と浸潤を特徴とし、予後が極めて悪い難治がんです。外科手術のみで膠芽腫を根治することは困難であり、放射線療法や化学療法を併用しますが、しばしば再発します。最近では、分子標的治療薬やウイルス療法などの新規治療法が処方されることで、治療成績の改善が期待されていますが、依然として根治には至っていないのが現状です。
膠芽腫の根治が困難な要因の一つは、発症早期からの高い浸潤性にあると考えられています。膠芽腫は、成熟した神経回路ネットワークやグリア細胞、血管網などで構成された複雑な脳環境の中を活発に浸潤します。したがって、正常脳組織に浸潤する腫瘍細胞とその周囲環境との関係を理解することは、これまで手つかずだった膠芽腫の浸潤メカニズムの解明につながるだけでなく、膠芽腫の進展を阻害する新たな治療戦略を提唱できる可能性があります。
当研究室では、高精細な形態・分子解析の手法を用いて、膠芽腫と周囲の脳環境との相互作用を包括的に明らかにします。また、膠芽腫の発がんモデルマウスや細胞移植モデルマウス、様々な培養系を駆使して、膠芽腫の浸潤を規定するメカニズムを分子レベルで解明します。さらに、得られた研究成果を膠芽腫をはじめとする難治性脳腫瘍の新しい治療法開発へ展開する試みにもチャレンジします。
Our laboratory employ high-resolution morphological and molecular approaches to comprehensively elucidate the interactions between glioblastoma cells and the surrounding brain microenvironment. Using a combination of genetically engineered mouse models, cell transplantation models, and diverse in vitro culture systems, we investigate the molecular and cellular mechanisms that govern glioblastoma invasion. Furthermore, we aim to translate our findings into the development of novel therapeutic strategies for glioblastoma progression.

2. 膠芽腫浸潤とニューロン移動の共通性・相違性の解明
病理的な状況において、膠芽腫は複雑な脳組織の中を活発に浸潤します。このような生後の脳内における細胞移動は、実は生理的な条件下でも生じていることが知られています。側脳室の外側壁に面した脳室下帯と呼ばれる領域には、生後にも神経幹細胞が存在し、活発に新しいニューロンを生み出しています。産生された未熟なニューロンは、脳内の目的地へ向かって高速で移動し、神経回路に組み込まれることで脳の機能や再生に貢献することが明らかになってきました。この「生後脳におけるニューロン移動」は、高度に制御された細胞移動様式として注目され、活発に研究が進められています。
澤田はこれまでに、名古屋市立大学大学院医学研究科 脳神経科学研究所 神経発達・再生医学分野(澤本 和延 教授)において、生後脳におけるニューロン移動のしくみについて研究してきました。特に、ニューロンが形成する微小な突起構造に興味を持ち、そのダイナミクスや制御メカニズム、生後の脳機能および脳傷害後の神経再生における意義を明らかにしてきました。
関西学院大学では、名古屋市立大学で培ってきた生後脳のニューロン移動に関する知識・経験をもとに、膠芽腫の浸潤過程との共通性・相違性を分子・細胞レベルで明らかにしたいと考えています。得られる研究成果は、細胞移動の基本原理の解明につながるだけでなく、神経再生やがん抑制のための重要な手掛かりになる可能性があります。
Our laboratory aims to elucidate the shared and distinct molecular and cellular mechanisms underlying neuronal migration and glioblastoma invasion. The knowledge gained from this research will not only advance our understanding of the fundamental principles of cell migration in the postnatal brain, but also has the potential to provide important direction for therapeutic strategies in tumor suppression.




